2012年6月15日金曜日

外語大の先生の新刊をご紹介します


今年の2月から5月にかけて外語大の先生による著書、訳書が次々と出版されています。そのなかからいくつかの本をご紹介します。海外小説の翻訳書や日本の近現代史を扱ったもの、あるいは震災以降の複雑な問題意識を主題にしたものまで、注目される様々な本が刊行されています。

『津波の後の第一講』
編著:今福龍太/鵜飼哲
編集:清水野亜
岩波書店 2012年2月28日
本体2700円・四六版・上製・286頁
2011年3月11日を経て、不安、混乱、絶望……が心の隙間を埋めつくすなか、教員は、希望に胸を膨らませ教室の敷居をまたぐはずだった若者に、何を語ったのか。大震災の後の現実と大学の教室とがはじめて触れ合った瞬間の記録です。学びはじめる若者たちへ。大学講義をまとめたアンソロジーです。

『戦後部落解放運動史──永続革命の行方』
著者:友常勉
編集:阿部晴政
装丁:天野誠
河出書房新社 2012年4月30日
本体1300円・B6版・並製・232頁
かつて社会をゆるがした被差別部落民の闘いは、何を問いかけ、今の私たちに何を残したのか。戦後から現在にいたる「運動」「行政」「文化」などの各領域の経験を思想的に検証した、いまだ誰もなしえなかった果敢な試みです。

『ありえないことが現実になるとき──賢明な破局論にむけて』
著者:ジャン=ピエール・デュピュイ
訳者:桑田光平/本田貴久
編集:大山悦子
装丁:間村俊一
挿画:元田久治
筑摩書房 2012年5月10日
本体2800円・四六版・上製・240頁
3月11日以降、『ツナミの小形而上学』(岩波書店)や『チェルノブイリ ある科学哲学者の怒り』(明石書店)など、「カタストロフィ」を主題とした哲学者のデュピュイの著作が次々と翻訳されています。本書もそれに連なる一冊です。デュピュイは、私たちに必要なのは、近代産業社会が生みだし、今や無用の長物となった「リスク論」などではなく、「賢明な破局論」である、と本書のなかで語ります。また、経済的合理主義や道徳哲学を超えた、人類の消滅という大いなる破局を回避するための方法を、現代に生きる私たちに力強く提言します。

『カンボジアを知るための62章【第2版】』
編著:上田広美/岡田知子
装丁:明石書店デザイン室
明石書店 2012年5月10日
本体2000円・四六版・並製・428頁
「アンコール遺跡」「貧困」「戦争」……。画一的なイメージで語られることの多いカンボジア。本書はそうしたステレオタイプを覆す格好の入門書です。目覚ましい経済発展をとげ変化しつづける今のカンボジアを、多くの図版やコラムをまじえながら紹介します。

『ブラス・クーバスの死後の回想』
著者:マシャード・ジ・アシス
訳者:武田千香
編集:中町俊伸
装丁:木佐塔一郎
挿画:望月通陽
光文社 2012年5月20日
本体1314円・文庫判ソフト・576頁
ブラジル文学最高の文豪マシャード・ジ・アシス(1839-1908)。アメリカの批評家スーザン・ソンタグは、「19世紀の主要な作家の一人であり、ラテンアメリカ最高の作家だ」と彼を評しました。そのマシャードの主著が、武田先生渾身の新訳でいよいよ刊行です。

『女が嘘をつくとき』
著者:リュドミラ・ウリツカヤ
訳者:沼野恭子
編集:斎藤暁子
装丁:新潮社装幀部
挿画:平澤朋子
新潮社 2012年5月30日
本体1800円・四六版変型・222頁
男の虚栄や謀略に満ちた無用な「嘘」とは遠くかけ離れた、女の奥深く豊かで謎に満ちた「嘘」の数々。この他愛なくもみえる女の「嘘」は、不幸のなかを生きるための大切な術の一つのなのかもしれない……。本書は、現代ロシアで最も著名な女性作家による6編の連作短編集です。