2013年3月22日金曜日

青山弘之著『混迷するシリア──歴史と政治構造から読み解く』刊行

昨年の12月、本学の青山弘之先生が、『混迷するシリア──歴史と政治構造から読み解く』を岩波書店から刊行しました。

著者:青山弘之
編集:藤田紀子
岩波書店 2012年12月19日
本体1700円・B6判・並製・カバー・158頁
ISBN 978-4-00-022923-4

2010年の終わりにチュニジアで端を発した「アラブの春」。この政治変動が、シリアに波及したのは2011年3月でした。「民主化」を求めて立ち上がったシリアの人びとは、厳しい弾圧と諸外国の思惑のなかで、いまも恐怖にさらされながら生活しています。昨年8月、日本人カメラマンの山本美香さんがシリアでの銃撃戦に巻き込まれて命を落としました。この事件によって、その混乱の激しさをあらためて知った人も少なくないかもしれません。

著者である青山先生は、本書の冒頭で「シリア情勢を単純化された「民主化」論に押し込めること」に対して「違和感」を感じると書いています。「独裁政権」という悪に「革命」で対抗する、といったような勧善懲悪で予定調和な「民主化」の流れのなかにいまのシリアの状況を持ち込んでも、決してその実情を理解することはできない、と。本書は、このような問題意識のもと、シリアの現代史、政治構造、さらには国際関係などの観点から、シリア政治のいまに迫ります。シリアに対する固定概念を取り払い、さまざまな視点からこの問題について考えるために、本書を手に取ってみてはいかがでしょうか。

帯文:
「民主化」か、「内戦」か、それとも「独裁体制」の存続か
シリア情勢を読み解くうえで必備の一冊!

目次:

第1章 バッシャール・アサド政権は「独裁政権」か?
1 モザイク社会としてのシリア
2 「ジュムルーキーヤ」への道
3 権力の二層構造
4 亀裂操作
5 市民社会建設に向けた実験
第2章 東アラブ地域の覇者
1 アラブ・イスラエル紛争――地政学的ライバル
2 レバノンへの関与――二つの国家、一つの人民
第3章 反体制勢力の「モザイク」
1 交錯する類型
2 反体制運動の高揚
第4章 「アラブの春」の波及
1 改革要求運動
2 体制打倒運動
第5章 「革命」の変容
1 シリア化――反体制勢力の迷走
2 軍事化――武装集団の台頭
3 国際問題化――混乱のさらなる助長
終章 弾圧と「革命」に疎外される市民
参考文献一覧

著者紹介:
青山弘之(あおやま ひろゆき)
1968年生まれ。東京外国語大学総合国際研究院国際社会部門准教授。専攻は、現代アラブ政治、思想、歴史。東京外国語大学アラビア語学科を卒業後、一橋大学大学院社会学研究博士後期課程単位取得退学。その後、パリ大学付属在ダマスカス・フランス・アラブ研究所(現フランス中東研究所〈IFPO〉)研究アラビア語修得過程を終了。同研究所共同研究員、アジア経済研究所地域研究センター中東研究グループ研究員等を経て現職。著書に『中東・中央アジア諸国における権力構造 アジア経済研究所叢書1』(共編、岩波書店、2005年)、『現代シリア・レバノンの政治構造 アジア経済研究所叢書5』(共著、岩波書店、2009年)など。また、ウェブサイト「シリア・アラブの春(シリア革命2011)顛末記」を運営。